連載|貴社の購買は、いまどのステージにいますか?②

~「海外事業」からグローバル事業体に脱皮するとき~ BLOG

(つづき)製造業のお客さまの「最初のグローバル購買」が、長い時間をかけ「完成系としてのグローバル購買」に至るには、一般的には3度の脱皮を経ます。今回はその1、最初の脱皮についておはなしします。靭性向上(リスク耐性)がテーマです。

伝統的な購買業務の鉄則は、生産体制を確立してきた国内本社工場で育まれます。「品質・納期・価格の三つ揃い」が不動の目標であり、品質要件は開発が定め、納期要件は生産が定め、購買はもっぱら「価格」によって経営に貢献する、と自己定義されています。このため、はじめて海外購買を立ち上げるとき、まず品質を満たせる仕入先の洗い出しと選定が課題となり、有望企業のいそうな地域を幾つか選び、それぞれ数社の候補をピックアップし、視察面談・サンプル提出・キャパ確認・試験的発注に進まれ、見積交渉にはいります。ここまでの個別動作は、100%そのままで正解です。問題はここからです。

このとき、これまでの従来の慣例にしたがい、「品質・納期・価格の三つ揃い」総合力でベストの1社をえらび、そこ(だけ)から購買することを考えます。そしてこの方針は、たとえば金型の貸与(=投資)を要するときや、品質向上のための技術指導(=コストと期間)を要するとき、いっそう「当然のこと」されがちです。しかし実は、ここに問題が潜んでいます。いったい何がいけないのか。

ひとことで言えば、日本の外側でなにかを調達するときは「安全は所与でなく、安定は持続しない」のです。日本国内とはかなりリスク前提が違う。このことを織り込んで、コンティンジェンシープランを考えなければならないのですが、この視点が抜け落ちているのです。短期的には安寧が続き、問題が露呈することはないかもしれません。しかし実のところ、どこかの選挙結果たったひとつで関税戦争や燃料高騰がおこり、相手にする途上国が増えればそれだけ、デモ・内紛・クーデター・綱紀粛正・国際紛争のタネはふえ、そればかりか災害に見舞われる可能性は増えるのが自然です。まして空路・海路・輸出入手続きをともなうグローバル調達はその影響をたいへん受けやすい。

グローバル経営にあって、こうした不測の事態への対策の基本は、「タマゴを一つのバスケットに入れない」ことです。購買でいえば、異なる国・異なる地域の仕入先から、同じ品質の仕入ができるよう、あえて「冗長性」を持たせることです。あらかじめ技術指導済みの仕入先パートナーを、戦略的に多国多地域に分散配置しておく。そしてその能力を動態保存するために、平素からあえて分散発注し、仕入先全体でキャパシティに多少の余裕がある状態をつくっておく。仕入れ値には幅があるかもしれない。最安値集中ではない。しかし、これこそが理想形なのです。よく練られた、ポートフォリオ分散と、バックアップキャパシティの保有が、不測時の対応力(=靭性)を向上するからです。むろん数量が小さすぎるときなどは、そうした分散が容易でないこともあるでしょう。その場合は、たとえば従来お世話になった国内の仕入先も、ホットバックアップとしてお取引を続けておく方法が考えられます。

こうした考え方のもと、本社の購買と生産が主導して、グローバルリスクシナリオとそれに応じた供給のコンティンジェンシー計画を立てるプロジェクトを立ち上げます。そのうえでさらに、本社の購買チームが音頭をとって各国工場の購買担当と常につながっていて、地政学的変動のアンテナを常にたてておく状態になれば、この脱皮は無事完了したといえるでしょう。(つづく)