海外事業を誰に担当してもらうか。人選の適材適所はすべての社長の悩みどころでしょう。ひとつのヒントとして、海外事業で活躍する人材のタイプを二つ、ご紹介します。
ひとつは「山賊人材」と呼んでいる才能です。彼らは、なにも手掛かりのない環境に送り込まれても平然としていて、ひとつひとつ自分で試行錯誤しながら、最初の成果を生み出すことができる開拓者です。着想、創意工夫、突破力に強みがあり、史上初の目標に、自由裁量で挑むことを好みます。一方で、細かく指図されることは苦手で、臨機応変な方法変更を許さないPDCA管理を嫌います。
もうひとつは「正規軍人材」と呼んでいる才能です。彼らは、こうすれば勝てる、という筋さえ持っていれば、巨大市場が相手でも強い競合がいても平然としていて、緻密なチームワークを組み立てながら業績を積み重ねて行ける組織人です。効率、効果に強みがあり、手順と進捗管理の緻密さを好みます。一方で、自分で方法を考え出すのは苦手で、朝令暮改型のOODA管理を嫌います。
日本企業の海外事業拡大でとりわけ大切なのは、いつどの職位を、どのタイプの才能に担ってもらうかという、タイミングを踏まえた適材適所です。
外国語が堪能だし金庫を任せても不安がないという理由で、正規軍人材を開拓初期の市場の駐在所長に当てたり、国内営業のPDCA(緻密化)で比類なき業績を挙げた正規軍の将軍を、立上げ期の海外事業役員に任命したりすると、開拓はピクリとも動かなくなり、「値段が高すぎ」「市場がない」「流通がダメ」「現地社員に問題アリ」など、お決まりの《できない理由》ばかりが報告されはじめます。
むろん、そうした理由のひとつひとつは"真実"ですが、"全て"ではありません。むしろ、タイミングを踏まえた適材適所の不全が原因であることが、大半を占めます。戦略監査をご依頼いただいて、海外事業部全体の人材におめにかかることがありますが、こうしたときには適材適所の監査もまた、答申させていただくことがあります。
なお、山賊と正規軍の両方に適応できる両刀人材もいます。しかし、突出した山賊の才能や、突出した正規軍の才能は、どちらかに強く傾いた人材として別々に居ることが、経験上殆どです。したがって人事配置(適材適所の使い分け)が、非常に重要になります。

