海外伸長にともない、開発キャパシティがひっ迫しはじめている社長にむけて書きます。
日本企業の多くは、海外市場にあっても優れた技術力や開発力で追い風を掴みます。このとき狙った市場で営業が進むと、クロージングには開発チームの出番となり、虎の子の開発チームの今季のキャパシティが突如として逼迫しはじめることは、けして珍しくありません。
製品に対する顧客の要望が世界的に標準化されていて、もっぱら本社のもつコア技術で差別化できてしまうタイプの製品(例:測定器、医療器材、など)の場合はそれほどでもありませんが、顧客要望が多彩でそれに密着する(=かゆいところに手が届く)能力で差別化するタイプの製品(例:パーツなど)では、移動工数、訪問頻度の低下、時差などによるアジリティの低下から、国内案件のようには回せず、さりとて現地で単独で動ける技術要員は育っておらず、「なかなか大変です」という感想をよく伺います。
実のところ、開発部隊のグローバル対応のすすめかたには、多くの先行企業の成功・失敗事例から導き出せる、《こうするほかない》という正解が市場タイプ別に(ほぼ)あり、これに照らしながら、相手にする市場のステージと、我が社の人的リソースと投資リソースを睨み、優先劣後の経営の意志を加味して、バランスをとってゆくことになります。
それは、一言でいえば「グローバル・ワン・開発室」の構想で、サテライトでの徹底した顧客密着・実装設計・アジリティと、セントラルでの徹底したコア技術・コアユニット・ノウハウの総合化とを、あたかも一つの部署であるがごとく、推進できるようになる、というゴール像を描きます。そこでは、外には異文化・異言語・異時間帯に活き多様な顧客と対話しながら、内には完全に同一の価値観・エクセレンシーを共有する、グローバル・ワン・開発チームを育てる歩みなのです。サテライト人材は、採用から育成まで、一貫して本社開発が司令塔となり(=現地事務所任せには絶対にせず)、じわじわと活躍できるスタッフを増やしてゆく、そんな歩みになると思います。
なおトヨタ自動車では、次のような指針が堅持されています:
A)市場適応(商品企画・仕様・一部設計)は地域に近いところで行う
B)技術基盤・プラットフォーム・品質・長期投資・コア技術は本社で統合する
C)生産思想は全世界で完全に統一する
我が社にとって、どこまでがAで、どこからがBか。わが社のCはどのように文字化できるか。こうしたことを議論してゆくことが有効です。

