次の事業の柱を、なんとしても見出さねばならない社長に向けて書きます。
魅力的な市場で勝ち抜き、長く事業を磨き上げてきた会社であればあるほど、社員の第一線には、重要顧客の深掘りと製品技術の精緻化に長けたメンバーが並ぶようになります。これは既存事業を強くするうえでは、とても大きな強みです。一方で、その強みがそのまま、新規事業への柔軟性を失わせることがあります。
ひとたび市場そのものの長期的な退潮が避けられなくなり、新たな事業機会を探し出すという「やったことのない」ミッションを前にすると、社内のエース人材たちが軒並み苦戦を強いられる、という例は珍しくありません。これは能力が足りないからではありません。むしろ、これまでの事業で大きな成果を上げてきたからこそ、既存事業を深く掘り下げることには非常に長けている。その能力と、新しい領域を探索する能力とは、必ずしも同じではない、ということです。
このとき、外部人材や外部組織を活用する方法もあります。ただ、探索の成果を社内で受け取り、さらにその後も持続的に新しい機会を探し続けるためには、やはり社内に探索体制があったほうが有利です。
ここでは、これまで長く社内になかった「機会探索チーム」を、どのように立ち上げたらよいか。手短に10のポイントを列挙します。
① 営業部でも企画部でもなく、社長直下にチームをつくります。責任は社長が引き受け、チームには「会社の次の柱を見つける」という不退転の決意を持ってもらいます。既存事業の都合に引っ張られないことが重要です。
② 山賊人材(※)を2名、発掘してきます。ここに山賊コーチ(外部)と社長を加え、4名程度のチームを編成します。この活動は、結局のところ適材適所がすべてを決めます。誰を選ぶかが、極めて重要です。
③ 探索したい領域(=ユニバース)を10~20設定し、1領域3カ月程度で探索計画を立てます。まず「どこを探すのか」を明確にします。そのうえで、緊急度・優先度を見ながら、どの領域から検討するか順序を決めます。
④ 1領域につき一日程度を費やし、領域内から有望な仮説を網羅的に洗い出すセッションを持ちます。最初から少数に絞り込むのではなく、可能性のある仮説をできるだけ広く出します。必要であれば、その分野の識者を招聘するのもよいでしょう。
⑤ 仮説評価はシンプルに行います。見るポイントは、(a)よい畑か、(b)勝てるか、(c)勝ち続けられるか、(d)わが社のすべきことか、の4つです。それぞれをS/A/B/Cの四段階でスコアリングします。
⑥ 制限時間つきの評価ステージを設けます。(I) 3分判断、(II) 3時間判断、(III) 3日間判断、(IV) 3週間判断、という具合です。最初から時間をかけすぎず、可能性の低い仮説を早い段階で落としていきます。
⑦ ステージを通過するときには、その仮説が有望であるための条件を必ず明示します。つまり、「次のステージで何が確認できれば、この仮説をさらに追う価値があるのか」を決めておきます。これが、次の調査の優先順位になります。
⑧ 次のステージでは、優先検証事項から集中的に確認していきます。すべてを調べようとするのではなく、「この点が確認できれば前に進める」というところから潰していきます。これにより、探索のスピードを保ちます。
⑨ 現場訪問を大切にします。ネット活用は(II)までとし、それ以降のステージでは「現場百回」を繰り返します。実際に現場を見て、顧客や事業者に会い、識者の話を聞く。机上の情報だけでは見えてこないことが、必ずあります。
⑩ 人脈のメンテナンスを続けます。「現場百回」で得た人脈は、チームだけのものではなく、会社の資産です。一度話を聞いて終わりにするのではなく、定期的に意見交換できる関係を築いていきます。こうした人脈が、次の探索の入口になることも少なくありません。
(※)「山賊人材」と「正規軍人材」については、別記事で詳述しています。山賊人材は、「実力はあるが自分勝手」「変わり者」などと言われている人の中に隠れていることが多いです。自社の強みを深く理解していて、突破力があり、型にとらわれない。その部分を短所ではなく長所として活用していただきます。
わたしたち(Pan Asia Advisers)の専門領域はグローバル事業です。ただ、「はじめて海外事業に飛び込む」活動と、「はじめての領域で成長機会を探す」活動には、よく似た面があります。どちらも、社内に十分な経験がない領域に踏み込み、限られた情報のなかで仮説を立て、現場に出て確かめ、次の一手を考えていく活動です。そのため、海外事業で培ってきた探索の勘所が、新規事業の機会探索にも活きることがあります。実際に、両方を併せてご支援する例も珍しくなく、そうした経験が上のような知見に結実しました。

