発想転換|「オーバースペック・高すぎる」と言われたら考えるべきこと

~トップアプローチのススメ

これからローカル需要をしっかり獲りにゆきたい社長にむけて書きます。

日系企業のグローバル化も大きく進み、そうした例はだいぶ減ってきたと思いますが、この20年のあいだ、現地進出した日系企業の営業部隊が、現地顧客開拓で苦戦する例をたくさん目撃してきました。腕利きの営業マンを揃え、業界に詳しいコンサルを雇い、大手見込客にアポをこじあけ、間違いなく優れた製品をプレゼンするのですが、担当部局や購買と面談を重ねるうちに、ことごとく「オーバースペック」「高すぎる」と嫌われ失注してゆくのです。このとき「ではスペックを削って、できるだけ価格をさげよう」と反応してしまうと、実は永遠に勝てない負のスパイラルに巻き込まれるのですが、かつては超一流超大手と目されるエリート企業でも、この罠に嵌まり何年も苦しむ例が多くみられました。

わたしたち(Pan Asia Advisers)もまた、日本企業の優れた製品や技術を、有力な現地企業に導入するサポートを長く続けていますが、この「オーバースペック」「高すぎる」という声を聴いたら、面談した相手の職位が低すぎたサインですよ、と助言しています。どういうことかというと、その面談者は(わたしに任されている範囲では)スペックが高すぎ、価格が高すぎる、と言っているにすぎないのです。まったく同じ製品や技術を、5年後10年後の事業に責任をもっている上席者(=多くの場合オーナー本人)に「未来技術」として紹介したとたん、景色が変わります。「おもしろいじゃないか」「わが社の未来を賭けたい」という反応が返ってきて、スペシャルプロジェクトがその場で立ち上がるのです。

成長国の企業はほぼ100%、指揮命令系統と階層ごとの職務権限が明確に定められたトップダウン組織です。成長国ばかりでなく、日本を除くほとんどの国の企業が、じつはそうなっているのですが、課長職が責任を持つのは来季まで、部長は来々期、事業部長で中期計画、5年以上先になるとオーナーマターになることが殆どです。中間職に大きく裁量以上されたミドルアップに慣れた日本の企業人はつい、ここを勘違いして、自分と近い職位のミドルに面談を申し込み、彼らの守備範囲外の長期的価値をプレゼンしてしまうのです。

このためわたしたち(Pan Asia Advisers)は、進出国で大型顧客の開拓をするとき、できるかぎり初回訪問から本社社長に、御出陣いただくことにしています。未来技術を満載した日本製品が持ち込まれたとき、それを評価できるのは相手のオーナーだけなので、日本企業側もまたつりあう職位の方にご同行願うわけです。ミドルが先にしっかりお膳立てするのに慣れた伝統的な日本企業では、はじめ「ビックリ」されることも多かったですが、近年では「ひさしぶりに営業第一線担当させてもらって、ワクワクしますね」と腕まくりされる日本の社長も増えてこられました。こういう場合、相手のオーナー経営者とも意気投合され、トントン拍子でよい関係が築かれることが多いです。

のこる論点は、どうしたら現地大手企業のオーナーにアポイントがとれるのか、という点でしょう。これができる支援者は限られています。現地の営業マン・営業コンサルでは、むずかしいところです。