

India Strategy
インド|戦略コンサルティングの視座
総論|インド
いま、海外事業に携わるビジネスパースンの見識を測るとき、もっとも手早いリトマス試験紙は「インド事業」への考え方でしょう。"競争が過酷で、交渉が手ごわく、みな赤字続きと聞く。遠く不便で、灼熱でしかも衛生事情が過酷だ"。こんな言葉を並べてインドを劣後しようとする人は、真っ先に職務から外すべきです。21世紀にあって、日本企業が世界で貢献しつづけることを目指すなら、市場と人材の力が大きく伸び行くインド事業は最も重要なピースになることは疑いえません。目先の業績だけ糊塗するか。今世紀にわたる永続的繁栄の力を養うか経営者としての知性・見識と矜持が丸ごとわかってしまうのが、インド事業です。
総論|インド
目標は日本:製造業立国に驀進する現代インド
1948年に英国から独立したインドが、今日につながる経済成長のレールに乗るには長い年月を費やしました。インド人自身の手で忍耐強くインフラと必需産業を育てつつ、70年代に製薬産業が離陸し、80年代に二輪四輪、90年代にIT産業が動き出し、00年代についに製造業立国のビジョンが絵空事でなくなりました。2014年に、それまでグジャラート州の産業近代化で手腕を振るってきたモディ氏が首相となってから、日本型の製造業立国政策が打ち出され、以降音を立てて産業と社会の近代化にばく進しているのが現代インドです。優秀な技術系人材、財閥の分厚い事業経験、ここに欧米トップ大学で最先端を学んだ帰国子弟の発想がフュージョンすることで、いまもっとも加速した時期を迎えています。
日本企業はインドで自力をつけ、来るべきアフリカに備えよ
今世紀にあって、これからもっとも大きな経済の伸びしろをもつ単一国家はインドです。ゆくゆく20年遅れてアフリカ諸国が立ち上がってきますが、当面の成長市場の主戦場はインドほぼ一択といってよいでしょう。すでに激しい市場競争がはじまっていますが、20年後30年後に振り返れば「あのとき参入していたからやれた」と痛感するにちがいありません。またこうした成長著しい市場で切磋琢磨する経験は、多くの日本企業をグローバル企業に鍛え上げる絶好の演習場になると期待されます。現地で優れたリーダーを発掘し力をあわせ、粘り強く現地事業を作り上げてゆく、必須不可欠なマネジメント力が鍛えられるからです。
デジタル最先端はインドに:留学組が世界最先端を持ち込む
インド産業界には伝統的に、留学生が世界最先端を持ち帰る流れがあります。独立直後はタタ財閥総帥自身が欧州に学び産業近代化に邁進し、製薬産業もIT産業も留学生たちが立ち上げた産業でしたし、'00年代にマハラシュトラ州でワイナリーを立ち上げたのもアメリカ帰りの留学生たちでした。いまインドが世界で最先端を切り開いているのが、社会のデジタルトランスフォーメーションで、ウェブベースのITサービスがインド国内の旧態然としていた流通サービス業などを劇的にアップデートしはじめています。いっとき、中国が電子決済やECで世界最先端をけん引しましたが、インドはそれをあっという間に追い抜いた観があり、いまもっともイノベーションが起こりやすい環境に向かいつつあります。
B2C Strategy
India
B2C企業の戦略|インド
ひと昔まえ、日本のB2C企業にとってインドはいかにも"too early"で、我々のプロダクトを購入できる層があまりに少ない、と敬遠されることが珍しくありませんでした。ところが、わずか10年もたたぬうちに、気が付けば激しい価格競争の渦巻く市場に変貌しており、いきなり"too late"に化けてしまった印象を持つ方も多いと思われます。人口の伸びと所得の伸びが掛け算で加速する成長国特有の地合いに加え、他国より一桁は多い市場の絶対規模が作用し、猛烈な生産設備の投資が行われたことが、この背景にあります。
くわえて、一口に「インドの消費者」といっても、文化や習慣の幅がおそろしく広く多様で、その適合には優に10年はどっぷり、多様な市場たちに浸かり理解を深めておくことが必須で、"時がきたら行こう"といった悠長な対応では、まるで機能しないという事情があります。
B2C 企業の戦略|インド
各論
必需品分野は、もっとも熾烈な市場競争に突入
こんにちでは、およそ消費生活に必須のものは、ほぼインドで作られおり、需要の大きなセクターでは、現地系企業たちが激しい市場競争にしのぎを削っています。これからこうした市場に参入するとしたら、ピッタリの「市場良品」を的確にプロデュースできる、本格的なインドビジネスの実践力が必須です。市場自体が拡大を続けているため、まだ劣敗企業が市場から次々と追い出されるには至っていませんが、外資系企業については、よほど特徴があるか、すでに参入済みでないと、いよいよ事業環境は厳しくなってきているといえるでしょう。
高付加価値・差別化されたセクターはドアが開いた
いっぽうで、ユニークで差別化されており、しかし従来は高価格すぎてインド参入を見合わせていた製品やサービスについては、ようやくドアが開いてきました。日系企業の場合、こうした消費財の多くは、すでに欧米先進諸国で事業を成功させているケースが多いと考えられ、いよいよ満を持してインドの上流層に向けた事業を始動できる段階にきました。ユニクロ、MUJI、ココイチ、亀田製菓など、世界レベルに達した消費者の嗜好性を巧みにとらえ市場浸透が始まっています。日本製品への信頼感が総じて高い点も、追い風といえるでしょう
インド以西は、ジャパンプレミアムは通用しない
なお日本企業にとっては、東アジアや東南アジア市場で頼もしい追い風となってくれていた"ジャパンプレミアム"や"トーキョークール"が、ほとんど効果を感じられない点もまた、インド以西のB2C市場の特徴といえます。東洋人というより西洋人の感覚の人々が多数派を占めるからです。文化習慣の色が濃い加工食品や日用雑貨や、意匠性の高い消費財では苦戦しやすく、粘り強く「日本ファン」を育てるか、機能性の訴求に特化するなど、工夫がもとめられます。
b2B Strategy
India
B2B企業の戦略|インド
この10年間でインド工場の生産設備は急速に増大しましたが、その大半は国内需要にむけた廉価なB2C製品の生産設備でした。こうした工場の生産設備は、当初は日欧外資系にも多少の参入チャンスがありましたが、市場が拡がるにつれ高性能であるよりも廉価であることが遥かに重要になり、ある時点からインド国内のB2B事業者による廉価な機械や設備が市場を席捲してゆきました。結果として、インド国内のB2B事業者は、内需向け機械を大量生産し、廉価生産の力をつけています。こうして展開された膨大な生産設備が、次第にワールドクラスの製造力にレベルアップしてゆくのがこれからの20年だと考えられます。従来は高付加価値すぎて需要の少なかった日系B2B製品も、これから需要が立ち上がることが予想されます。
B2B企業の戦略|インド
各論
量的拡大にこたえる生産設備需要は基本現地勢が強い
B2B分野では「8割2割」という言葉を使うことがしばしばあります。現地の競合製品は、われわれと比べて性能は「8割」だが価格は「2割」で、結果勝負にならない、という事態をそう呼んでいます。ローカル製品ははじめ「5割2割」ぐらいなのですが、大量の需要にこたえ大量に生産しているうちに、性能をじわじわと高め、最終的に「8割2割」に近づきます。こうした競争になると、日系の製品は少々コストダウンしたところで、ほぼ勝負になりません。
むしろ、じわじわと伸び始める高度な生産設備需要にチャンスがある
日系B2B企業の殆どは、高度経済成長を80年代に終え、その後の永い停滞時代を生き抜くために、高付加価値化を遂げました。高精度、高耐久、高性能、省エネ、高稼働など、日系製品の持つ強みは、インドではこれからゆっくりと立ち上がってきます。もちろんインドにこうした技術やノウハウを持つ企業はなく、先見の明があるインドB2B事業のオーナーたちには、こうした技術に備える必要があることを静かに認識し、欧州勢か日本勢との提携を考え始めています。
製品にもよるが、JVによる参入は有効な手段となることがある
独資で参入するか、現地で提携を求めるかは、製品の特性や経営哲学次第です。一般に、優良顧客開拓が容易でなかったり、製品のコア部分以外では廉価生産力が活きる場合などでは、現地事業者とのJVが、優れた手として浮かび上がってきます。じっさい、市場開拓力が高く、廉価製造の技術基盤を確立しした、信頼関係を取り結びやすい現地企業との提携は、多くの日系B2B企業を成功に導いてきた実績があります。日本企業側は、技術力だけでなく、提携マネジメント力・JV子会社育成を導く力などが、求められ鍛えられます。
Short Essays
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コラム|インド
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