

Indonesia Strategy
インドネシア|戦略コンサルティングの視座
総論|インドネシア
人口世界4位。東南アジアの赤道下に拡がる巨大なイスラム教徒の国。一日に五回、拡声器で街中に響き渡るアザーン(礼拝の呼びかけ)は実にエキゾチックですが、じつは戦中戦後にわたり日本との関係が深く長い国です。すでに多くの日本企業が現地で事業を立ち上げて久しく、ジャカルタ圏では1万人を超える駐在員と家族が生活しています。これから所得を伸ばす巨大人口があること、赤道直下にあること、イスラム教徒の国であること、などを活かした戦略を据え、腰を据えて取り組むことで、インドネシア事業は魅力的な海外事業ポートフォリオの一つに育つポテンシャルがあります。
総論|インドネシア
生産基地から市場へ:かわる日系企業のインドネシア観
ひと世代前の日本人の「インドネシア駐在」といえば、その仕事の半分ぐらいは輸出用製品の生産が含まれました。人件費水準が高まってしまったタイからの生産移管がその基調の一つで、インドや中東向けの製品製造を担っていた時期がありました。しかし今日この景色はかわり、インドネシア内需向にむけた活動がほぼメインになっています。背景にはインドネシアの堅調な経済成長があり、人件費の上昇により製造輸出はなりをひそめました。しかし、消費生活のレベルアップと、生産設備の近代化が着実にはじまっています。内需主導でゆっくり着実に成長してゆく国、がいまのインドネシアです。
赤道直下の巨大なイスラム教徒の国で日本企業が学べることは多い
日本企業にとってインドネシアは、もっとも近くにある赤道直下にある、所得成長中の、イスラム教徒の国です。こうした地の利を生かし、日本企業はインドネシアでさまざまなラーニングとイノベーションを経験してきました。そのもっとも古典的な例は、男性用の全身シャンプーを小分け包装でヒットさせたM社の事例でしょう。日用のボトルサイズでは高額すぎた問題を、デート時に1回限りで購入できるしつらえにし、爆発的に市場浸透に成功させました。これ以後、成長国向けの日用雑貨品の販売戦略として世界中の手本となりました。ほかには、蚊よけや防虫剤、酷暑下の水分補給商品、整腸飲料などを、所得の必ずしも高くないマス層にどう浸透させるか、といった世界共通の課題について、まずインドネシアで製品仕様や販売手法を磨き、のちに中南米やアフリカに展開する例が多くみられます。ほかには、日本企業にとって馴染の薄かったハラル規制(食品・飲料・医薬品・化粧品などに適用される)の対応も、インドネシアで力をつけた日本企業は少なくありません。世界拡大を睨んだビジネスのR&D基地になりうるのです。
インドネシアのカントリーリスクをどう見るか
アジア通貨危機の記憶、デモなどの治安報道、あるいは賄賂横行のうわさなど、インドネシアを不安視する種はつきませんが、冷静に成長国の全体集合のなかで相対的に見てみれば、インドネシアのカントリーリスクは十分に対処可能な範囲にはいっているといえます。1968年スハルト体制のち武力クーデターや憲法停止したことはなく、選挙かデモを含む民主的手続きの範囲で事態の収拾を続けてきています。財閥には、特定の政治勢力と親密になりすぎるものもあり、選挙結果で羽振りの落差が大きいケースも聞かれますが、多くの財閥は上手にバランスをとっているように見えます。とはいえ、解消しない貧富の差を背景とした潜在的不満はデモの過激化を呼ぶことがありますし、最大都市ジャカルタでは気候変動による水没被害を影響うけやすい、交通インフラ普及の立ち遅れから物流商流に慢性的な滞りが見られるなど、インドネシアならではの留意点はいくつかあります。
B2C Strategy
Indonesia
B2C企業の戦略|インドネシア
自動車・バイク、家電、食品飲料、医薬品・化粧品、日用雑貨、レストランなどB2Cビジネスを展開する日本企業にとって、インドネシア事業の位置づけはこの20年で大きく変化しました。一言でいえば、輸出製造の比重が減り、内需浸透が事業目的の大勢を占めるようになりました。背景としてインドネシアの人々の所得が着実に成長しつづけたことがあります。中長期的な巨大人口の成長と堅実な所得増が見込まれ、高齢化も相対的に遅いインドネシアは、長期的視座で取り組めるなら、世界的に見てもとりわけ有望なB2C市場と言えるでしょう。
B2C 企業の戦略|インドネシア
各論
消費者理解の深さで勝負する時代に入った
日系のB2C製品を購入できる消費者が、上位層から徐々にアッパーマス層に拡がることで、従来はおおむね日系か欧米系と競合していた製品部門でも、ローカル系のB2C製品と競合がはじまり、この傾向は今後いっそう強まってゆきます。むろん日系プレーヤは"日系の良さ"を広い層にも浸透させる戦い方を続けるべきですが、いっぽうで現地消費者への洞察が"欠けている"ような弱点の露呈は、もはや許されなくなってきます。ひと時代前の型落ち製品をそこそこの廉価で製造していれば事足りた時代は、すっかり過去のものとなりました。育ちつつあるアッパーマスのインドネシア人のライフタイルと嗜好性をどこまで深く理解し、製品仕様とマーケティングそして販売からアフターまでを組み立てられるかが、切実に問われる時代に入っています。
現地人材育成は製造だけでなく企画から経営まで
こうした競争環境の変化にともない近年では、製品企画の中枢に優れた現地人材の活躍が必須となり、そこからの自然な流れとして事業企画から統括にいたるまで現地人材が活躍することが理想的になってきました。つまり、インドネシア現地法人にあって、当社に強い帰属意識をもった幹部人材が育つことが、事業運営の重要目標となりはじめています。むろん、日本本社や世界各拠点をふくめた企業グループを挙げた技術やノウハウの持ち込みには、本社から派遣される人材が必須の役割を担いますが、製造だけでなく企画から経営まで担える現地人材の育成は、もはや不可避になってきたと考えるべきでしょう。
高付加価値・高価格の製品サービスの市場も伸びている
また従来は、購買力をもつ消費者層がごく少なかったため、例外的な流通が起こるだけだった高付加価値の日本製品やサービスが、所得の上昇につれ需要が拡大しはじめているのも見逃せない点です。各種工業製品は言うを待たず、インドネシアでは、アニメ・漫画・ゲーム・エンタメなどジャパンコンテンツへの嗜好性が高いこともあいまって、日本型のハイカルチャー・ハイコンテキスト商材(化粧品、菓子、加工食品類)の親和性は高く、またサービス業態で言えば高級外食業態や日本向けツーリズムなどで、目覚ましい伸びを見せています。
b2B Strategy
Indonesia
B2B企業の戦略|インドネシア
機械や設備、素材や副資材など生産財を製造販売する日本企業にとってもまた、インドネシアの位置づけは重要な変化が進行しつつあります。一言でいえば、伝統的には事実上、在インドネシアの日系工場に限られていたビジネスが、現地系工場にも拡がりはじめています。経済が急成長している他アジア諸国(中国、ベトナム、インドなど)より幾分緩やかとはいえ、最終製品を見る人々の目が着実に肥えることで、それが製造サイドの設備近代化や工業団地や地域インフラに投資する動機となっています。これにこたえ、まず海外製の高性能の生産財の売上が伸び、これにつれその廉価版生産財を現地で生産する流れが始まっています。
B2B企業の戦略|インドネシア
各論
日系工場向けビジネスは堅調かわらず
インドネシアの日系工場の購買に応えるビジネスは、引き続き堅調を維持しています。早期からインドネシア現地生産を奨励されてきた二輪四輪の部品メーカのほか、生産集積の優位性が聞いた製品を日本やタイ拠点から輸入販売する装置メーカなど、多くの日系B2B事業者が活発に活動を続けています。
現地系工場向けビジネスが立ち上がりを見せている
こうしたなか、従来はごく例外的にしか見られなかった、インドネシア現地企業が、日系B2B企業の商材を購買するようになってきています。インドネシアの経済水準が上昇するにつれ、最終製品を見る人々の目が着実に肥えることで、それが現地製造者の設備の近代化につながっています。近代的設備ははじめ日系や欧米系製品の輸入からはじまりますが、この高い価格をターゲットに、同等品や類似品をインドネシアで生産販売する動きが合理的になりはじめます。なおインドネシアの工場購買には、"サプライヤ"と称する独特の流通を介在させる風習が強く残っており、この攻略がB2Bビジネスの一つの鍵を握ります。
地の利を生かしたB2B事業は引き続き盤石
これら一般的な産業材のほかに、インドネシアには、特産する原料を活かし、これらを高度に加工することで輸出するB2B事業が伝統的に存在します。石油天然ガスなどの鉱物資源系、パームオイルなどの植物資源系が両巨頭ですが、直接的に関与できている日系企業は多くありません。いっぽうで、熱帯の自然環境に恵まれたインドネシアは、世界で最もスパイス類を豊富に・かつ大量に産出する国で、これらを高度に加工する香料の分野では、世界を代表する欧米・日本の香料メーカが輸出製造拠点を構え堅実な事業を継続している一面があります。
Short Essays
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